ザ・クリスタルボール
| ザ・クリスタルボール | |
![]() | 岸良裕司 おすすめ平均 ![]() 結論より、そこに至るプロセスの方が面白い 読み物としてはおもしろい ザ・ゴールのようなわくわく感があって、読み始めたら止まらない。 TOC流全体最適の入門書 「THE GOAL」ゴールドラット氏の最新刊Amazonで詳しく見る by G-Tools |
世界中にTOC(制約条件の理論)を広めた「ザ・ゴール」のエリヤフ・ゴールドラットが小売ビジネスについて記しました。TOCが世界中にブームを巻き起こしたのに比べると、本書で述べられている考え方は、今となっては目新しいものではありません。しかしながらビジネス読み物としては重要なエッセンスがわかりやすくまとまっていると思います。
本書の骨子となる考え方は「サプライチェーンの構築」です。本来、店頭には必要な商品が必要なだけ、必要なときに存在すればいいはずです。しかしながら、我々は在庫というバッファを介在させることで、その本質を忘れてしまっていたようです。
本書の主人公、ホームファブリックのチェーン店ハンナズショップの店長ポール・ホワイトがそのことに気づくきっかけとなったのは、倉庫の排水管の事故でした。水浸しの倉庫が使えなくなったことで、在庫投資ができなくなり、かえって回転率がよくなったばかりか、店頭スペースの効率的な利用が促進され、ISM(インストア・マーチャンダイジング)までが向上するという結果をもたらしました。
ポールが利用したのは、ハンナズショップの地域倉庫でした。地域倉庫には、バッチピッキングの対象にならない、半端な数のアイテムが眠っています。これらは、需要がありながらも店舗に出荷されることはありません。こうした商品を必要なだけピッキングし、必要な時に出荷することで顧客に答えることで、顧客満足度と在庫回転率の向上が両立できるようになった訳です。
ここまでの話は、当たり前のようですが、多くの企業で実践できていません。その理由はロジスティクスの制約です。早い話、小分けのピッキング・出荷は手間がかかり、相等のスペースを必要するからです。その解決策を示したのは出版社の倉庫管理をヒントとした在庫のABC管理です。ベストセラーなど、よく売れている本は倉庫内の「ミニ倉庫」にて小口配送ができるように管理し、それら以外は棚に保管し、倉庫内の通常のスペースで管理するというものです。
これらの試みはことごとく成功しますが、店舗内、あるいは本社でのコンセンサスを得るのが難しい、その状況が描かれています。この本は小売に燗する技術論というよりもむしろ、正しく、効果をあげている方法をいかに認めさせるか、という内容も隠れたテーマなのではないでしょうか。
また、優れたサプライ・チェーンを構築するのは、自社内の工夫だけではなく、より川上、すなわちサプライヤーを巻き込むことが必要です。ハンナズショップのバイヤーであるポールの妻、キャロラインホワイトは、別の切り口から小口の仕入れという解決策にたどり着き、サプライチェーンはその裾野を広げ、物語は大円団を迎えます。
本書では、店舗間、倉庫間の商品融通をクロスシッピングという手法にて解決していると記述していますが、果たしてそれだけで充分なのか、疑問が残ります。また、需要予測にしろ在庫管理にしろ、コンピュータ・システムの整備(データの共有)、ロジスティクスの整備が不可欠ですが、これらには深く触れてはいません。これらが有機的に結合して初めて、「クリスタル・ボール」の中に未来が見えてくるのだと思います。
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読み物としてはおもしろい
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